地域社会圏研究所とは
「地域社会圏」は経済行為と共にある居住形態を計画せよ、というとある大学での設計課題からはじまりました。それぞれの住人の私的空間ではなく、多様な活動を許容する空間です。「1住宅=1家族」システムが「私生活の自由」のためのみにあるのだとしたら、一方の「地域社会圏」システムは「自らが決めるべきことを自ら決める意志」を持った人々が住む空間です。トーマス・ジェファーソンがいう、「公的権力に参加する自由」のための空間です。コミュニティと呼ぶことのできる住み方です。「地域社会圏」が地域ごとの権力であるためには、それが経済行為のための場所であることが決定的に重要です。コミュニケーションを媒介とした経済行為はかつてのコミューン(都市自治体)においても「地域ごとの権力」を生んだ最大の要因でした。その経済行為が地域に固有のブランド力をつくり、外から訪れる人々を迎え入れる豊かな空間をつくったのです。「これが私たちの住む街である」という、来街者に対する強いメッセージを空間それ自体が持っていました。
「地域社会圏」とはそのような空間です。それ自体が一つの経済圏であり、それに適した以下のような空間を持っています。
1.「閾」をもつ住宅
私生活のためだけでなく、「地域ごとの権力」に参加できるような経済活動のための「見世」という公的空間を持っています。
2.インフラと共にある
インフラは国家事業、住宅は私的消費材という日本の分割統治住宅政策ではなく、住民自治による自前のインフラと共に設計されます。
3.生活保障システム
「地域社会圏」内の住人相互による生活保障システムの構築をおこないます。同時に介護、環境保全、家事、育児などの仕事の創出につながります。
4.専門家集団
意志決定は様々な専門家集団と「地域社会圏」の住人との協働によります。地域社会圏が国家と個人の<あいだ>にある中間集団であるように、専門家も中間集団です。
5.建築空間としての魅力
「私たちはここに帰属している」という意志を表す「現れ(appearance)」を持っていなくてはなりません。フレキシブルでありながらも強い空間的魅力が必要です。
これら空間のあり方や仕組みの実現を目指し、考える、それが「地域社会圏研究所」です。